『大人の音楽コミュニティには、いくつかの入口があっていい』

さいたま~都内を中心に、バンド形式のコピー・セッションやライブイベントを開催するコミュニティ「ライブワゴンミュージック」です。

音楽のコミュニティを続けていると、時々、自分が思っていたものとは少し違う見え方をされていることに気づくことがあります。

たとえば、主催者という立場でいると、参加者とは少し距離を置いて全体を見ているように見えることがあるのかもしれません。自分ではそんなつもりがなくても、イベントの進行を考えたり、参加者の調整をしたり、次の企画のことを考えたりしていると、自然とそう見える瞬間もあるのだと思います。

ただ、コミュニティというのは、主催者が一方的に形を決めていくものではありません。人が集まり、それぞれの好みや経験や目的が重なって、少しずつ形ができていくものです。最初に考えていた形と、続けていく中で見えてくる形が変わっていくこともあります。

最近あらためて考えるのは、音楽のジャンルや年代のことです。

大人の音楽コミュニティでは、どうしても昔から親しまれている曲や、参加者が若い頃に聴いてきた曲が中心になりやすいところがあります。これはとても自然なことだと思います。音楽は、ただの音ではなく、その人の記憶や時間と結びついているものだからです。

学生時代によく聴いていた曲。
昔バンドでやってみたかった曲。
当時は聴くだけだったけれど、今になって演奏してみたくなった曲。

そういう音楽には、単なる懐かしさだけではない力があります。年齢を重ねたからこそ、若い頃とは違う感じ方ができることもありますし、昔はただ好きだっただけの曲を、今あらためて演奏してみることで、別の面白さが見えてくることもあります。

一方で、新しい音楽に触れることにも、別の楽しさがあります。

知らなかった曲を、誰かの演奏をきっかけに知る。
普段は聴かないジャンルに、セッションやライブを通じて出会う。
自分の中にはなかったリズムや音色や言葉に触れる。

音楽コミュニティの面白さは、そういう偶然にもあります。

ただ、現実には、古い音楽をじっくり楽しみたい人と、新しい音楽に取り組みたい人が、いつも同じ場所で自然に混ざるとは限りません。もちろん混ざることで生まれる面白さもありますが、何でも一つの場に入れようとすると、かえって分かりにくくなることもあります。

音楽の好みは、人によってかなり違います。
年代によっても違いますし、これまで通ってきた音楽によっても違います。
さらに、演奏したい曲と、聴くのが好きな曲が違うこともあります。

だから、大人の音楽コミュニティには、いくつかの入口があっていいのだと思います。

懐かしい曲を楽しむ入口。
新しい曲に触れてみる入口。
セッションとして一回限りの演奏を楽しむ入口。
何度か同じメンバーで合わせて、ライブに向かう入口。
演奏する側ではなく、まずは聴く側として関わる入口。

一つのコミュニティの中に、いくつかの入口があることで、それぞれの人が自分に合った距離感で音楽と関われるようになります。

これは、コミュニティを分けるという話ではありません。
むしろ、ひとつの大きな場所の中に、いくつかの入り方があるという考え方です。

大人になってから音楽を続ける場合、若い頃のように「全員で同じ方向へ向かう」という形は、必ずしも合わないのかもしれません。仕事や家庭や体力のこともありますし、音楽に求めるものも人によって違います。

人前で演奏したい人もいれば、無理のない範囲でセッションを楽しみたい人もいます。新しい音楽に挑戦したい人もいれば、昔から好きだった曲をじっくり演奏したい人もいます。

その違いを無理に一つにまとめるのではなく、それぞれの入口を作っておく。そうすることで、結果的にコミュニティ全体は続きやすくなるのではないかと思います。

音楽の場は、固定された形ではなく、少しずつ変わっていくものです。人が増えれば雰囲気も変わりますし、企画が増えれば関わり方も変わります。その中で大事なのは、最初に決めた形を守り続けることではなく、集まる人たちにとって自然な形を探し続けることなのかもしれません。

古い音楽も、新しい音楽も。
セッションも、ライブも。
演奏する人も、聴く人も。

それぞれが無理なく関われる入口があること。

大人の音楽コミュニティには、そういう余白があっていいのだと思います。